波野發作『カは宇宙貨物船のカ』作品情報&著者情報(『月刊群雛』2016年04月号掲載)


『月刊群雛』2016年04月号

『月刊群雛』2016年04月号には、波野發作さんの小説『カは宇宙貨物船のカ』が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプル・著者情報などをご覧ください。



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作品概要


 「地獄の夏休み」の傭兵稼業で大金を得たイークロン・プレビア(伊黒潤)ら地球人高校生四人組。しかし、銀河通貨は地球では使えない。これでは宝の持ち腐れじゃないか。なんとかして有効活用できないかと考えたイークロンは、ひらめいた。そうだ、宇宙貨物船を買おう! ということで、すべての宇宙貨物船購入予定者に最新宇宙貨物船(中古)売買情報をお届けします! さあ、あなたも銀河の果てへ旅立とう!


── 間違いだらけの宇宙船選び(2016年版)

カは宇宙貨物船のカ


  成功の鍵は、誰にも見つかっていないものを探すことだ。
       by アリストテレス・オナシス(海運王)

「すーいませぇーん」
 秋葉原の雑居ビルにある雑貨ショップ〈紅葉商店〉の店頭で、店員を呼ぶ声がした。返事はない。地球人高校生・伊黒いぐろじゅんことイークロン・プレビアが入り口から店内を覗きながら、おそるおそるさらに声をかける。
「すーいませーん。誰もいませんか?」
 アント店員が出かけるのは外でこっそり見ていたが、店頭に外出中の札がないので、店長かもう一人の店員のジェシカ嬢のどちらかはいるはずだ。イークロンはくびをかしげながら店内に入り込んだ。一見するとジャンク系のPCパーツショップのようだが、よく見るとなんだかわからない品物ばかりだ。メーカー名も見覚えのないものが並ぶ。英語のようだが、どうもスペルが変だ。見たことがない記号も混ざっている。ロシア語かなとも思うが、あれはもっと角張ったものだったように思う。「金色のライフパッケージをください。あなたの充実にバンザイ」だの「爽快な荒れ模様。夢と怒号あふれるスキャンダラスブレイク」だの、妙なキャッチフレーズの商品がある。ブリスターパックなので中身は見えるが、何に使う機械なのかわからない。「ハンディ布団乾燥機」と札が貼られた商品もあった。万年筆サイズの道具だが、これで布団を乾燥できるのか? パッケージは読めない文字で書かれていたが、写真を見る限りはミニチュアの布団を乾燥する道具のようだ。フィギュアのグッズ? かとも思ったが、これはたぶん小型の宇宙人が使うものだ。
 イークロンは知っていた。この店は普通の地球人の店ではない。まったく普通ではない宇宙人による宇宙人のための宇宙人グッズの店だ。店の半分ぐらいは日本語で非売品と書いてあり、その下に何か記号が書かれている。イークロンは過去にテンピリア星の軍人養成所で訓練を受けているので、それが銀河標準商業文字コモンズであり、そこには金額が書かれているのだとわかる。ちょっとした小物でも地球人の生涯賃金ぐらいの値段なので暗澹たる気分になるが、逆に出稼ぎができれば一攫千金も夢ではない。現にイークロンたち高校生四人組はテンピリア第三王子であるアントに無理矢理連れて行かれた過去二回の傭兵バイトで結構な金を稼いでおり、メンバーの分をまとめれば、秋葉原がある国の国家予算十年分ぐらいにはなるのである。しかし、現状では地球の通貨との換金はできない。制度も法律も仕組みもない。彼らには地球上でその大金を使う術がないのである。地球が汎銀河商業協同組合オルガニゼイションへ正式に加盟し、独立した太陽系国家(あるいは商業地域)として確立すれば、地球人が銀河貿易の舞台に立つことはあるかもしれない。そうなると星外為替が可能になるのだが、そのような予定はなかった。

「おや、いらっしゃい。珍しい顔だな。アントくんの後輩の子だよね」
 倉庫室から店主の〈秋葉先生マスターアキバ〉が姿を見せた。
「ごぶさたしています」
 イークロンは秋葉先生にぺこりと会釈をした。

※サンプルはここまでです。


作品情報&著者情報


波野發作(なみの・はっさく)
波野發作(なみの・はっさく)

『月刊群雛』や群雛文庫で『オルガニゼイション』シリーズを展開中。

◆ 公式サイト:『NAMINO_WORKS』
http://naminow.com/

── オルガニゼイションってどんなシリーズなんですか?
 『オルガニゼイション』は、地球の秋葉原に店舗を構える宇宙人向け雑貨店兼銀河貿易商〈紅葉商店ヴェニスン・カンパニー〉の店長〈秋葉先生マスターアキバ〉 と、その娘ジェシカ、店員のテンピリア星第三王子アント、出入りの輸送業者キャプテン・ハック(ハック船長)、アントの友人(軍では部下)であるイークロン、アクィナス、ソロン、ミドルら地球人高校生四人組が繰り広げるスラップスティック系SF落語です。基本的に一話完結ですが、キャラやアイテムがちょっとずつ絡み合って、だんだん話がデカくなっていきます。広げた風呂敷をどう畳むのかが当面の課題です。

── 以前のシリーズはどこで読めるんですか?
 『月刊群雛』2015年02月号掲載『ヴェニスンの商店』で秋葉先生とアント王子、ハック船長が登場しました。『月刊群雛』2015年04月号掲載『ガッデンの箱娘』ではジェシカが登場し、秋葉先生の娘になりました。『月刊群雛』2015年04月号〜12月号での連載『オルガニゼイション』では、イークロンたち四人組も登場しています。本作中に登場するハック船長の〈方程式〉事件のエピソードは『月刊群雛』2015年10月号の連載第4話(通算第6話)『集めた方程式』のことです。これらの作品は群雛文庫『オルガニゼイション』『オルガニゼイションⅡ』『オルガニゼイションⅢ』『オルガニゼイションⅣ』の各巻でもお楽しみいただけます。各巻表紙はソメイヨシノさんによるジェシカの可愛いイラストが目印です。『月刊群雛』2016年02月号掲載の『エピソード・ゼロ』では秋葉先生が地球へ流れ着くまでの経緯を詳しく紹介しました。『月刊群雛』2016年03月号掲載の『ジョディ/スージー』は、イークロンら四人組の傭兵時代のエピソードになっています。各話相互に仕込んだネタもたくさんあるので、合わせてお読みくだされば幸いです。

── 手付け金のお金って先月のアレですか?
 そうです。『月刊群雛』2016年03月号掲載『ジョディ/スージー』のラストで、イークロンがジェント軍曹に振り込んでもらった五千ギオールがコレです。よく覚えてましたね。

── 最終的にこの物語はどうなるのですか?
 もう一年以上続けていますが、いよいよこの「シーズン1」も残すところ最終話だけです。どこで出すかまで決めていませんでしたが、この際なので『月刊群雛』で発表することにします。次号になるか、その先になるかはわかりませんが、ご期待ください。

── たくさん宇宙船が登場しました。それぞれにモデルはあるのですか?
 今回はもうひたすらたくさんの宇宙船を紹介しました。ちょっと似た名前の宇宙船が有名SF作品に登場するので、わかる人はすぐにピンときてニヤリとしてくれていると思うのですが、あまり馴染みのない人にはわからないはず。わからなくても別に困らないと思うのですが、詳しく知りたい、SFが好きになりたいって向きには少しご案内をしておきます。あくまでモデルですので、原作の設定をまるごとそのまま使っているわけではありませんよ。
〈ミネルワ〉:モデルは高千穂遙(たかちほ・はるか)『クラッシャージョウ』シリーズでおなじみの「ミネルバ」です。メジャーなスペースシップなので、一番わかりやすかったかも。〈ウエナス〉はこれのシリーズモデルという設定です。
〈コメータ〉:エドモント・ハミルトン『キャプテン・フューチャー』シリーズの「コメット号」です。ただし、原作のティアドロップ形状ではなく、アニメ版のデザインをベースにしています。構造を具体的に書いたので、すぐにわかってしまいましたね。
〈ハルメルン〉:田中芳樹(たなか・よしき)『銀河英雄伝説』の帝国軍艦艇です。名称は「ハーメルンⅣ」からですが、フォルムはアニメ版の標準型戦艦のイメージですね。
〈フォールコン〉:もちろんあの世界一有名な宇宙船「ミレニアム・ファルコン」がモチーフです。〈マグパイエ〉はその派生型ということになります。
〈エピメテウス〉:映画『スターゲイト』シリーズの「プロメテウス」とか、『プロメテウス』の「プロメテウス」とかですね。ヴィジュアルイメージとしては『エイリアン』の「ノストロモ号」や、『エイリアン2』の「スラコ号」あたりも浮かんでいました。
〈ハチェットⅦ〉:これはとくにモデルありませんが、私の手元にある『オルガニゼイション・パイロット版』の表紙に使ったイラストのCG画像が設定のベースになっています。いつかお見せできる日が来ると思いますので、お楽しみに。

波野發作さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2016年04月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。