波野發作『クルンテープ』作品情報&著者情報(『月刊群雛』2016年05月号掲載)

作品情報&著者情報
『月刊群雛』2016年05月号

『月刊群雛』2016年05月号には、波野發作さんの小説『クルンテープ』が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプル・著者情報などをご覧ください。

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作品概要

 タイ・バンコクへの旅行を翌日に控えた会社員の夕子。ちょっとホラ吹きでめんどくさいけど嫌いじゃない先輩社員の朝子に飲みに誘われて、驚愕の事実を知ることになる。一方、約200年前のシャム国王ラーマⅠ世(チャオプラヤー)は、旧首都トンブリーを遷都。新首都にとんでもない命名をしたのだった。時空を超えてクロスする言霊に翻弄される夕子。果たして予定通りバンコクにたどり着けるのだろうか。

―― 華やかな大都市のにぎわいと厳かな仏教文化

クルンテープ

 まいどいっぱいのおはこびで。
 世の中にはいろんな名前があるもので、ここ最近はとみに素っ頓狂な名前が増えてきております。具体的に出すのは、ここでは差し控えさせていただきますけども、世に言うキラキラネームだとか、口の悪いヤツはDQNネームだなんて揶揄する、ああいう名前。
 まあ、読めない。読めないんだけども、読めないなりに読もう読もうとすると、どうにかこうにか読めるようにもなってくるもので、あれにはコツがあるんです。たとえば「命琴」なんて名前があったとして、それは「いのちこと」じゃあない。「命」を「みこと」と読ませて、そのうちの「み」だけ頂いて、「こと」は「琴」の字を当てる。まあ、だいたいは姓名判断で縁起のいい画数に合わせるために、そんなやりくりをしているわけなんですが。
 親は親なりに、子の成長を祈って、思いを込めて名前をつけます。その思いが強すぎちゃって、さんざんてんこ盛りにしたもんだから、大変なことになったっていう笑い話なんかもありますな。
 地名もまた多くの人々の思いが込められているもので、ワシントンDCやホーチミン、レニングラードみたいにその国々の偉人の名前を冠したり、チャド共和国の首都・ンジャメナは「癒しの場所」という意味だったりと、それぞれに深い深い意味があるものなんであります。

 OLっ、とは最近は言わないんでしたね。とある会社の経理部に務める、会社員の夕子ゆうこ。明日からの海外旅行に備えて、定時でさっさと帰ろうと身支度をしていると、いつものように先輩会社員の朝子あさこが近寄ってきた。
「ちょっと寄ってかない?」
「すいません朝子先輩。明日は朝五時起きで旅行に行くんです」
「あら?」朝子は、そういう話には目がない。夕子がしまったと思っても、時すでに遅し。ちょっと話聞かせなさいよ、ということでいつもの居酒屋に連れ込まれてしまった。
 
「で、どこに行くの?」
「アジアです」
「アジアのどこ」
「タイです」
「タイのどこさ」
「バンコクさ」せんばやまにはタヌキがおってさ♪ ってそれは違うお話。

※サンプルはここまでです。

作品情報&著者情報

波野發作(なみの・はっさく)
波野發作(なみの・はっさく)

『月刊群雛』や群雛文庫ほかで『オルガニゼイション』シリーズを展開。カクヨムで3作同時連載中。

◆ 公式サイト:『NAMINO_WORKS』
http://naminow.com/

◆ カクヨム:波野發作
https://kakuyomu.jp/users/hassac

―― 波野さん?

 ども。毎度おなじみ流浪の兼業作家、波野發作(なみの・はっさく)です。名前だけでも覚えて帰ってください。

―― オルガニゼイションは?

 なんのことでしょう?

―― オ・ル・ガ・ニ・ゼ・イ・ショ・ンは? あんた次が最終回とか言ってただろ。

 ……す、すいません。すでに書いてはあるんですが、文字数を『月刊群雛』仕様に調整するのが間に合いませんでした。試合前の計量でオーバーした減量ボクサーの気分です。あと五ページ分はみ出しているので、どうにかしてシェイプアップ&ブラッシュアップして臨みます! ご期待ください。
 あと全然関係ないですが、文章の量をなんて言うかで、その人の創作へのスタンスがちょっと見え隠れするような気がします。本職ライターだと「○文字」って言うことが多いみたいですが(発注も文字数で言われるよね。レイアウトで変わってきちゃうけど、不思議とだいたい収まる)、新人賞とかへの投稿やってる人は「○枚」って言うみたい。募集が枚単位だからなのかな。ぼくは文学賞とかまったく興味がないので、文量を枚単位で言うことはなさそう。もしぼくが急に原稿を枚数で数えるようになったら、「あ、ナミノはなんかどっかに応募したっぽいぞ」と思ってください。

―― 今回のこれはなんですか?

 昨年の文字フリマ(注:ブンガクフリマではない)で娘とのコラボで販売した消しゴムハンコ本『クルンテープ』を原作に、落語口演を想定して加筆修正したものです。敬体と常体が混在しているのは口演の演出です。最近敬常混在をいちいち気にするのがバカバカしく感じるようになったので、アンチテーゼとして書いてみました。知り合って段々親しくなる過程で、敬語からタメ語に移行するような微妙な距離感や、さっきまで名字で呼ばれていたのに、急に下の名前で呼ばれてキュンとしたり、さんづけだったのが突然呼び捨てにされて、イラっとしたり。そんな人生の機微を感じながら読んでいただければ幸いですが、そういう読み方をする人はちょっとおかしいと思います。

―― どんな人に読んで欲しいですか?

 落語家の方。前座よりは二つ目の人がいいなあ。真打でなくてもいいです。あとは、この振り付けを実際にやってくれるユーチューバーの人。「クルンテープ踊ってみた」とかぜひやってください。

―― 口演したり踊ったりするのには波野の許諾が必要?

 要りません。本作はCC0とします。高座にかけようが、人前で踊ろうが、印刷して売ろうが、適当に改変しようが好きにしてください。ただし念のため言っておくと、ウィキペディアからの引用部分は改変不可です。言い換えるか公的機関の提示する訳文に差し替えて引用外にするのはOKです。ていうかそもそも振り付けに関しては具体的には書いてないから、ぼくの埒外であります。

―― CC0ってなんですか?

 続きはWEBで! →[検索]CC0

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