電子の本の制作と、紙の本の制作の違い

コラム
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わざわざ「出版」と「publishing」の違いとか、「本」とはといった、言葉の定義を再確認したのは、「電子の本を出版する」というのはどういうことなのか、「紙の本を出版する」のと何が違うのかを、改めて考えるためです。

まず制作工程について。

文章を書く、または漫画・イラストを描く方法にも、アナログとデジタルがあります。しかし、電子の本も紙の本も、制作工程はデジタルです。

原稿用紙に万年筆で文章を書く人はもう少ないでしょうが、漫画やイラストの場合はまだアナログの方も多いでしょう。文章の場合はテキストデータにする工程が、漫画やイラストの場合はスキャンして画像データにする工程が必要です。初めからデジタルで書いて(描いて)いる場合、この辺りの工程は省けます。

紙の本でも電子の本でも、校正などの編集コストは同じようにかかります。そしてどちらも、広く頒布をするため「複製をするのに適したファイル形式」にする工程が必要になります。

商業印刷の場合、Adobe InDesign / Illustrator / Photoshop などが用いられる場合が多いです。Microsoft Word / Excel / PowerPoint で入稿できる印刷会社もありますが、レイアウトがそのまま再現できない可能性が高いです。

電子の本の場合、読む側がそのファイル形式に対応した閲覧用の電子機器を所有している必要があります。携帯電話、スマートフォン、タブレット、パソコンなど、現在ではさまざまなデバイスが普及しています。

デバイスには、閲覧に必要なソフトがあらかじめインストールされている場合もあれば、専用ソフトを入手(有償・無償問わず)してもらう必要がある場合もあります。この辺りは配信するファイル形式次第です。

文章の場合、文字装飾や行間・文字間隔などのレイアウト情報を持たないプレーンテキストであれば、まずどんなデバイスでも読むことができます。漫画やイラストの場合、JPEG や PNG といった一般的な画像ファイルであれば、ほとんどのデバイスで読むことができます。

漫画やイラスト、文章でもある程度レイアウトや文字装飾などにこだわりたい場合は、HTML で制作しウェブブラウザで見てもらうという方法があります。ブログや pixiv などのCGM(Consumer Generated Media)サービスを利用するという手もあるでしょう。

対価を得ることを考えると、配信や決済のサービスを提供する販売プラットフォームを利用することになります。そのプラットフォームがどういうファイル形式に対応しているか次第ですが、個人で制作する場合は PDF や EPUB ということになるでしょう。

縦書きに対応している EPUB 3は、オープン規格なので汎用性が高く、プラットフォームへ入稿するファイル形式として適しています。ただ、リフロー型の場合は表現力がまだ少し弱く、あまり複雑なレイアウトにはできない欠点があります。制作環境については、別記事で掘り下げます。

[posted by 群雛ポータル編集部]
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