インディーズやろうぜ ― ゼロからおしえる群雛のはじめかた ― hatching primer 第1章

ノウハウ・ハウツー
ゼロからおしえる群雛のはじめかた ― hatching primer

NPO法人日本独立作家同盟の電子雑誌『月刊群雛』に、作家と編集両方の立場から関わることになった波野發作(なみの・はっさく)氏が、『月刊群雛』への参加方法について優しくかみ砕いたガイドを寄稿してくれました。短期集中連載第1回は、「インディーズやろうぜ」です。

第1章 インディーズやろうぜ

インディーズってなんだよ

時代はインディーズ!

なんだインディーズって。音楽ではよく聞くよね。「インディーズレーベル」とかって、路上ライブやってるバンドが自費でCDをプレスしたりとか。金爆とかずっとインディーズだったりとか聞いたことあるでしょ。

文芸の世界だと「同人」って言うよね。それだと古っぽいから文芸も「インディーズ」って言ってみたんだろうたぶん。意味は同じだからね。OKわかった。やろうぜインディーズ作家。

メジャー作家になるのはカンタンなことじゃない。狭き門ってやつだ。なんたら文学賞とか応募して、下読みのフィルターをかいくぐり、最終選考に残った上で、お偉い先生方のお眼鏡に叶わないと、そうカンタンに作家になれないってのが我が国の文芸シーンの常識だった。長いことずっと。だって本を印刷して本屋さんに並べるってのはとんでもない大金が必要だから、それを肩代わりしてくれる出版社がいないと個人じゃできないわけだからね。出版社は賞取るぐらいの人じゃないとそんな金出さないもの。あとは芸能人とかね。さもなきゃ自分で自腹を切って印刷するか。とにかく、誰でもってわけにはいかんかったさ。それはみんなも知ってるよね。

ところが「電子書籍」ってもんが出てきてから話は変わったよ。誰でも(本当に誰でも)パソコン1つあれば、自分の作品を電子書籍にして、インターネットで売ることができるようになったんだから。もう、机に作品を仕舞い込んでおく必要なんかなくなったわけだ。素晴らしいねインディーズ。(ちょっとインディーズの話とはズレたけど)

同人からインディーズへ

そもそもインディーズってなんだろうね。昔は「同人」って言ってた。今でも言ってるけど。

明治時代までさかのぼると『アララギ』だの『ホトトギス』だのって同人誌がハシリだよね。『ホトホギス』なんかは夏目漱石も参加してたってんだから、同人誌だってバカにしたもんじゃない。日本の文壇の中心はそこにあったわけだから。

同人誌っていうとマンガの方が大きくなってコミケとかあるけど、あれは小説か漫画かなんてあんまり線引きしてないから、ひっくるめてインディーズでいいね。SFだとファンジンとか言うんだっけかな。この辺はぼくはあまり詳しくないので、それぞれで調べてみて。本題と関係ないので、これ以上は掘り下げない。ちゃんと調べたらめっちゃ面白ろそうだけど。

今はインディーズ文芸サイトがたっくさんあるし、Kindleダイレクト・パブリッシング(以下、KDP)もあるし、BWインディーズなんてインディーズをたっくさん集めてるレーベルもある。『月刊群雛』が制作に使ってるBCCKSもある。いい時代だと思うんだなあ。せっかくだから楽しんでいこう。

自費出版は300万円から

自費出版について少し話しておこうと思う。というのはワタクシ以前印刷会社にいたこともあって、自費出版のお仕事を承っていたり、編集プロダクションにいた頃も自費出版の仕事を請け負ったりしていたので、多少なりとも内情を知っているのよね。

昔は本を出すって言ったら印刷して本屋さんに配本するしかなかったんだけど、それをまともにやろうと思ったら何百万もかかるわけだね。部数が多ければ一千万円以上かかってしまう。そんな大金を、誰か知らない、面白いかどうかも、売れるかどうかもわからない本につぎ込めるわけがない。だいたいは持ち込んでも断られます。そりゃそうだ。そんなリスクを誰が負うのかと。

でもどうしても本にしたい、って向きは自腹切ってやるわけ。だいたい300万あればそれなりのボリュームでどうにか本の形にはなる。部数はそんなに刷れないけどね。もっと安くもできるけど、ペラッペラの豆本じゃ店で売れないからね。多少それっぽい装丁にするんであれば、そのぐらい金額を準備してくださいってことになる。

ちょいワルなところだと、「本にする原稿を探しています」なんて広告出して、寄って来たところを「じゃあ500万円で」みたいな話にするところもかつてはあったね。今は知らないよ。あるのかな?

実は世の中で流通している本の一部は、そういう自費出版の本だったりする。大手の出版社の本だってそういうのは混ざっている。著者が2000部お買い上げなんて約束があるのなら、刷った方がいいからね。だから、とりあえず金があれば、本は出せるってことだ。それは明治時代から変わらない。

時代は自費出版から自己出版へ

さて、最後に現代のお話をしよう。

大枚をはたいて本を出すことを自費出版というのであれば、金をちょこっとしかかけないで本を出すことを「自己出版」だ!と言った人がいる。まあ、最初に提唱したかどうかはわからないが、そういうことを大声ではっきりと言った人が、日本独立作家同盟の鷹野凌さんだ。これから話す『月刊群雛』の編集長でもある。鷹野さんの話には「自己出版」という言葉が何度も出る。

なぜ、金をかけずに出版ができるようになったのか、といえばそれはもうテクノロジーの進歩しかない。iPadやKindleからはじまった電子出版革命が、それを実現してくれたわけだ。もちろんその前から電子出版というものは存在していた。しかし、誰でも勝手にメジャーと同じ土俵で好きなように売ることができるようになったのは、そんなに昔の事じゃない。ぼくたちの戦いはまだはじまったばかりだ。

おっと、うっかり連載が打ち切りになるところだった。というわけで、現代人であるぼくらは先人にはできなかった「自己出版」の手法で、自由に自分の作品を市場に投入できるようになったわけだ。でんでんコンバーターBCCKSRomancerなど、無料でEPUBが作れるサービスが次々に出てきた。KDPも金がかかるわけじゃない。

貧乏だろうがなんだろうが、一攫千金を夢見てドリームをリアルにエクスチェンジできる時代が、今だ。ってことなんだな。少なくとも理屈の上では。次の章ではすこし現実の話もするけれど、この章ではまだ夢は夢のままでいい。とにかく、元手無しでベストセラーを生み出して、ブレイクするってことが、可能なんだ。もう先陣を切った人もいる。誰にだってチャンスはあるんだ。ってこと。

〈続く〉

[posted by 波野發作
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