SNSでの炎上と表現の自由 ―― インディーズ作家のためのSNS活用術〈6〉

コラム

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[posted by 鷹野 凌

インディーズ作家(※)に役立つショートコラム、第6回のテーマは「SNSでの炎上と表現の自由」についてです。

※私は、伝統的な出版手法である取次・書店流通を「メジャー」、それ以外の手段を「インディーズ」と定義しています

思ったことを即座に直接発信できるSNSは炎上しやすい

SNSは誰でも気軽に、思ったことを即座に直接発信できるツールです。長い文章を書くときならともかく、SNSへの一つの投稿に長い時間をかけてじっくり推敲する人は、あまりいないでしょう。それがSNSの良いところでもあり、怖いところでもあります。

というのは、投稿を読んだ人がどう感じるかを深く考えることなく、思ったことをそのまま書き連ねていると、ふとしたことで誰かを深く傷つけたり反感を招いたりする場合があるからです。そういった投稿は往々にしてあっという間に拡散され、あちこちから強い批判を受けることになります。いわゆる「炎上」です。

インターネット上では「消すと増える」法則が働く

なにか問題が起きたら、すぐに修正したり削除したりすればいい、と思うかもしれません。ところが、インターネット上への投稿は、修正や削除をしても瞬時に反映されない場合が多いのです。

ブラウザで表示すれば、キャッシュが残ります。画面を切り替えない限り、端末には表示されたままになります。そのままアーカイブされたり、スクリーンショットを撮られたりと、元投稿を消しても証拠を残されてしまう可能性は意外と高いです。

また、炎上後に撤回や謝罪することなく投稿を削除すると、代わりにアーカイブやスクリーンショットが拡散されることになります。都合が悪いからと安易に消すと、コントロール不能なところで増えていってしまうのです。いわゆる「消すと増える」法則です。

そして、ひとたび騒動が起きると、常にそういう話題を探している「まとめブログ」や「バイラルメディア」などに面白おかしく取り上げられ、さらに拡散されていきます。悪い情報ほど、伝播力は強くなります。

このようにして、せっかくコツコツと積み重ねてきた信頼が、あっという間に失われてしまう――SNSでの炎上には、そういう怖さがあります。もし運良く炎上しなかったとしても、気分の悪い思いをしたフォロワーはあなたの元を去っていくことでしょう。

「炎」撮影:鷹野凌

※イメージです(撮影:鷹野凌)

SNSはマスメディアの生放送に似ている

では、どういった発言が危ないのでしょうか?

政治家や有名人がテレビの生放送などで失言し批判され、発言を撤回・謝罪するような騒動は、昔からよくあります。居酒屋での放談ならその場限りで流されるようなことでも、マスメディアで何万人もの人に伝えられてしまうと「問題」になるのです。

SNSではこれと同じようなことが、有名人でなくても起きます。誰でも読むことができる、オープンスペースへの発言だからです。もし自分自身のフォロワーが少ないとしても、キーワードで検索している人に発言を拾われることがあります。フォロワーの多い人に捕捉されれば、あっという間に何万人もの人へ拡散されます。そういう意味でSNSは、マスメディアの生放送に似たところがあります。

つまり、政治家や有名人がマスメディアで発言したら問題になりそうなことは、一般人がSNSへ投稿しても同じように問題になる可能性がある、ということです。例えば、性別、年齢、職業、趣味、嗜好、民族、国籍、障害などに関して、差別的なことを言うのは危険です。

また、レッテルを貼るような主語の大きな発言は、影響範囲も広くなります。例えば、主語が「団塊の世代」だと三千万人以上、「アメリカ人」だと三億人以上、「女」だと世の中の半数が対象です。もちろん全員がSNSをやっているわけではありませんが、最大でそれだけの人を敵に回す可能性がある、ということは頭に入れておいた方がいいでしょう。

話題によっては、内容の良し悪しは関係なく、対立や論争を生む場合があります。例えば「政治・宗教・野球の話は、世間話では避けた方がいい」ということは、昔から言われてきました。理屈ではなく、感情的な対立が起きやすいからです。

表現を批判することもまた自由

こういう「怖い」「危ない」「気をつけよう」といった話は、なんだか窮屈に思えるかもしれません。その感覚はある意味、正しいです。というのは、どんな表現であっても、誰かを傷つける可能性はゼロではないからです。

「ビールがうまい!」→「私は痛風なので飲めません!」
「春の風が気持ちいい!」→「私は花粉症で辛いです!」
「脱稿した!」→「私はまだ締切に追われてます!」
「映画面白かった!」→「私にはそんなヒマありません!」
「おやすみなさい!」→「私は四十八時間寝てません!」

……勘弁してください、という気分になりますね。あらゆる可能性を考え始めたら、キリがありません。SNSへの投稿なんか、できなくなってしまいます。創作活動においても、表現の幅を狭めてしまうことになるでしょう。要は、バランスの問題です。

ただ、公開の場で表現する以上、誰かを傷つけたり、強く批判されたりする可能性があることは、意識しておいた方がいいでしょう。表現の自由は憲法で保障された権利ですが、表現を批判することもまた自由なのです。

結局のところ、言葉を介したコミュニケーションなのですから、SNSでもリアルでも同じことです。自分が言われて嫌なことは、相手にも言わない。自分がやられて嫌なことは、相手にもしない。そのようにして「人間関係」を構築することが肝要なのではないでしょうか。

次回のコラムは、SNSにおける情報収集術についてです。

〈続く〉

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