波野發作さんの小説『ジョディ/スージー』が『月刊群雛』2016年03月号に掲載! ―― 作品概要・サンプルなど

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『月刊群雛』2016年03月号

『月刊群雛』2016年03月号には、波野發作さんの小説『ジョディ/スージー』が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプルなどをご覧ください。

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作品概要

 夏休み中のジェシカが〈紅葉商店〉のペントハウスで読書三昧を満喫していた頃、地球人高校生イークロン、アクィナス、ソロン、ミドルら四人は、テンピリア星第三王子アントの手によって、テンピリア軍の訓練施設に押し込められていた。彼らの前に、鬼教官ジェント軍曹が現れる。銀河共通で軍事教練に欠かせないのが〈ケイデンス・コール〉だ。屈強な男達がランニングするときに大声で怒鳴っているあのかけ声のことだ。果たして、イークロンたちは無事一人前の傭兵として戦場に出られたのだろうか。地獄の夏休み編、そのひと幕。

―― テンピリア星へ連れ去られた地球人達の試練

ジョディ/スージー

ジョディ/スージー

  Here you are all equally worthless!
       by ハートマン先任軍曹(アメリカの軍人)

 今からもう半年前になる。その日も私はひよっこ共を預かり、一人前の兵士に育て上げて地獄に送り出そうとしていた。

「テーン」
 私の名前はジェント。栄光あるテンピリア軍の軍曹だ。我が王子マイロード直属の親衛隊養成所の教官を拝命している。今日もどこからか我が王子マイロードが新兵をスカウトしてきたので、栄光ある我が軍の伝統的な規律を一から叩き込み、一人前のテンピリア兵として育て上げ、我が王子マイロードの配下に相応しい人材として前線に送り込むのである。
「ハッ」
 私のかけ声で、ふぬけどもボンヘッドが気を付けっぽい姿勢を取る。これから三日間の超圧縮カリキュラムで、このふぬけどもボンヘッドに軍人の心得をきっちり叩き込んでやるのだ。覚悟しておけ。
「アティーズ」
 私が声をかけると、新兵どもが休めの姿勢を取る。しかし、それでは休み過ぎだ。何度言ってもちゃんとできん奴らだ。親の顔が見てみたい。話にならん。とりあえず目の前にいたガキを蹴り飛ばす。痛っと声をあげるが、倒れない。なかなか丈夫なヤツだ。というかこいつらデカいな。我が王子マイロードはこんなのをどこから連れてきたんだ。私は連中を見上げながら、怒鳴り散らす。
「お前たちは、デカいウンコだ! ウンコはしゃべるとき最初にサーをつけ、しゃべり終わったらサーをつけろ! それ以外は口を開くな! 臭いからな。わかったのか。わからないのか。わかる能力があるのか。ないのか。わかったなら返事をしろ!」
 立て続けにまくしたててやったら、デクノボーどもはばらばらのタイミングでお嬢様のような声で「サーエッサー」と言った。カマ野郎やり直しだと蹴りを入れてやったが、多少痛がるぐらいで微動だにしない。意外に根性あるな。ようし、もっとビシビシいくぞ。私は容赦はしない。それがこいつらのためであり、我が王子マイロードのためだからだ。訓練開始から五分が経過した。そろそろこいつらも音を上げる頃だろう。プルプルそわそわし始める頃ではないか? ん? ふむ。まだ落ち着いているな。我慢強い種族なのか。私の母星ではこんなに長時間立たされたら、おしゃべりを始めたり、隣のヤツを突いたりし始めるぞ。こいつらどこかで訓練を受けているのか? であればさらに厳しくしてもいいな。しかし、こいつらデカいな。クビが痛くなってきた。くそ。
「おい貴様たち。座れ」
「はい?」四人のリーダーっぽいのが聞き返してきた。一番トッポい輩だ。
「しゃべる前にサーをつけて、クソをし終わったあとにもサーをつけろと言っただろ!」
「あ、サーセン。サー」なんか違うが、まあいい。

※サンプルはここまでです。

作品情報&著者情報

波野發作(なみの・はっさく)
波野發作(なみの・はっさく)

『月刊群雛』や群雛文庫で『オルガニゼイション』シリーズを展開中。

◆ 公式サイト:『NAMINO_WORKS』
http://naminow.com/

―― 「オルガニゼイション」ってなんなんですか?

 全銀河を牛耳っている商人の集合体です。あまりに規模が大きすぎて、その全貌は誰も知りません。わたしも知りません。最新情報では、最近ようやく全銀河の実権を掌握したそうで、まだまだ拡大の余地はあるようです。そろそろ地球にも本格的に参入するかもしれません。

―― 作品としての「オルガニゼイション」は?

 あ、そっちは一年前の『月刊群雛』2015年02月号掲載の『ヴェニスンの商店』から始まった、スラップスティック系SFシリーズのことです。『オルガニゼイション』は今回登場したイークロン、アクィナス、ソロン、ミドルも登場する連作短編です。彼らは第四話『鋼鉄の羊』の機動兵器での戦闘アクションが初出でしたね。今回のお話は第五話『猫。あるいは夏のスフィア』の裏話的なエピソード。第七話『黄昏の街』冒頭の中野大地(ミドル)の回想シーンの一部でもあります。こちらは群雛文庫『オルガニゼイション』シリーズや『月刊群雛』のバックナンバーでもお楽しみいただけますので、ぜひお求めください。

―― このシリーズは〈秋葉先生〉が主人公じゃないのですか?

 ああ、まあ先月号で〈秋葉先生〉ことズキューン・バキューン氏が主人公であるっぽいことは言いましたね。今回は微塵も出ませんね。まあ、たまにはお休みもします。次作からは〈秋葉先生〉の八面六臂の大活躍が予定されているので、ご期待ください。

―― この先はどうなるのですか?

 今進んでいるシーズン1はあと二話で完結します。どこで発表するかは今のところ未定です。シーズン2の予定はあります。あと〈秋葉先生〉(ズキューン・バキューン)こと〈エージェント・オー〉(ラシッド)がメインの主軸以外に、他のキャラたちのブランチシリーズも考えています。

―― 〈ガッデンの箱〉の秘密について教えてください

 群雛文庫『オルガニゼイション』に収録の第二話『ガッデンの箱娘』に登場するアレですね。立場上あまり多くは語れないんですが、いくつかのヒントを挙げておきます。
① 地球に置いておけないのは、地球人がホラ話を得意とする種族だから。
② テンピリア秘宝館であれば大丈夫なのは、テンピリア人はウソがつけないから。
③ ガッデンの箱は吹き込まれた虚偽を事実に変換する。
時間軸でガッデンの箱娘より前の部分は、すでに箱発動の影響が出ているようです。
https://gunsu.hon.jp/2015/11/GunSu-pocket-edition-Organization-1-launched.html

波野發作さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2016年03月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。

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